フォーヴィスムの旗手 林武の《舞妓》

こんにちは。
ゴールデンウィークはいかがお過ごしでしたでしょうか。
まだ体がお休みモード…という方も多いかもしれませんね。体調を崩しやすい時期でもありますので、どうかお気をつけください。

さて、本日は19日(土)に開催されます近代美術オークションの出品作品の中から1点ご紹介いたします。
たくさんの画集や展覧会でも紹介された力作です。

89_convert_20120508131924.jpg
林武(1896-1975)
《舞妓》
62.5×42.0cm
キャンバス・油彩 額装
1958年作
右下にサイン
共箱

文献:
『林武全画集』P.125 №630(日動出版)
『林武』№59(美術出版社)
『世界名画全集 第24巻』カバー/P.105(平凡社)
『現代美術家シリーズ 林武』P.129/P.136(時の美術社)

展覧会:
林武回顧新作展 1958年(日本橋・高島屋)
明治・大正・昭和 美人画名作展 1962年(松屋/毎日新聞社)
日本芸術院 恩賜賞・院賞美術展 1968年(新宿・伊勢丹/日本経済新聞社)
画業50年記念 林武展 1970年(梅田・阪神百貨店/毎日新聞社)
女の美名作展 1971年作(千葉・そごう百貨店/日本経済新聞社)
林武展―この不屈の人― 1975年(日本橋・高島屋/毎日新聞社)
名画に見る舞子展 1979年(日本橋・三越/朝日新聞社)

エスティメイト \4,000,000~6,000,000



 1896(明治29)年、林武は東京の麹町に三代続く国学者の家系に生まれました。ほぼ独学で油彩画を習得し、25歳のとき第8回二科展にて新人賞にあたる樗牛賞、翌年には優秀賞にあたる二科賞を受賞し、画壇に頭角を現しました。その後、一九三〇年協会や独立美術協会に参加し、日本のフォーヴィスムの旗手として活躍していきます。やがて東洋の哲学や印象派の巨匠・セザンヌの構図理論などを取り入れた独自の絵画論や構図法の追求を始め、戦後には理知的な構成と情熱的なフォーヴ風のタッチというアンビバレントな要素を調和させた個性豊かな林芸術を展開していきました。

 本作品のモティーフ、舞妓は林が薔薇や富士とともに好んでよく描いたものの一つ。多くの画家たちが魅せられた舞妓の華やかさや日本的な美しさではなく、林は豪華な衣装や髪飾りに身を包んだ姿に安定感やボリューム感を見出し、均整のとれた造形美に着目しました。また、色彩において他の人間像よりも圧倒的に彩り豊かで複雑である点にも魅力を感じたといいます。
 
 1958年作(当時62歳)の本作品では、鮮やかな赤色の背景を斜めに切るように舞妓の上半身を大きく描き出しています。骨太な黒い輪郭線で対象を縁取ったステンドグラスのような色面構成と重厚なマチエール、奔放なタッチは林芸術の特徴をよく示すものと言えるでしょう。また、全体に立体感や量感を強調し、舞妓の顔や首には白粉と頬紅を塗った肌の質感を表現しました。そして、絵具が乾く前に背景に施した文様は林が装飾的な表現にも力を注いだことを窺わせます。
 このように画面上に交錯する立体感と平面性、舞妓の人形のような造形の安定感と生身の人間の繊細さ、それぞれの相克に林は微妙なつりあいを求めたのでしょう。自身の絵画論をもって伝統的な日本美に挑む画家の情熱が満ち溢れる作品です。

この作品は16~19日に開催予定の下見会にて展示いたしますので、ぜひご覧ください。
オークション・下見会スケジュールはこちら
みなさまのお越しを心よりお待ちしています。

(佐藤)

PageTop

児島善三郎 新画集刊行記念展覧会

こんにちは。
先週のBAGS/JEWELLERY&WATCHESオークションにご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。

今週4/25(水)~4/27(金)迄、シンワアートミュージアムにて「児島善三郎 新画集刊行記念展覧会」を開催いたします。

zenzaburo1.jpg
児島善三郎(1893-1962)は独立美術協会の設立に参加し、「日本的洋画」を確立した日本の近代美術を代表する画家の一人です。

本展覧会は最近では海外市場でも取引されており、再び注目を浴び始めている児島の全画業を網羅した新画集の刊行と没後50年を記念し、その画業を回顧するものとなっております。
初期から晩年まで約50点を展示しており、新画集やリトグラフの販売も行っております。


今回は展示作品の一部をご紹介いたします。

DSCN5917-2_convert_20120425132622.jpg
《5人の女(審判の前)》
139.0×162.5㎝  1929年作


T_歳時+1_convert_20120425132846
《松》
115.5×80.7㎝  1938年頃作



DSCN5913-2_convert_20120425135030.jpg
会場風景


こちらでご紹介しきれないのが残念ですが、普段はなかなか目にすることのできない作品の数々を無料でご覧いただける貴重な機会となっております。
皆様のご来場を心よりお待ちしております。


【展示概要】
児島善三郎 新画集刊行記念展覧会 

入場無料

会期:2012年 4月25日(水)10時~17時
4月26日(木)10時~18時
4月27日(金)10時~16時

会場:シンワアートミュージアム
   東京都中央区銀座7-4-12 ぎょうせいビル1F

(執筆:K)

PageTop

4月BAGS/JEWELLERY&WATCHES 下見会

先週の西洋美術オークションにお越しいただいたお客様、誠にありがとうございました。
つづきまして、今週はBAGS/JEWELLERY&WATCHESオークションが開催されます。

いつもシーズンに合わせた品揃えで充実するシンワのBAGS/JEWELLERY&WATCHESオークション。今回も、春本番を迎えたこの季節に相応しい商品がたくさん出品されます。水曜日からスタートする下見会を是非お楽しみに。

今日は、毎回BAGSオークションのメイン商品として出品されます、エルメスについて話していきたいと思います。

1837年ティエリー・エルメス(Thierry Hermès)により、馬具工房としてパリに設立されたエルメスは、ナポレオン3世やロシア皇帝などを顧客として発展したそうです。事業は、ティエリーの孫にあたる3代目のエミール=モーリス・エルメスに至って多角化され、1892年エルメス最初のバッグ、サック・オ-タクロアが製作されました。そして1927年には、腕時計の発表をはじめ、服飾品・装身具・香水などの分野に次々と事業を拡大し、現在では世界的な高級ファッションブランドとしてその頂点に位置づけられていますね。中でも、1935年に発表したハンドバッグは、モナコ王妃となった女優のグレース・ケリー(Grace Kelly)が妊娠中の腹部を隠すために持っていた写真が1956年アメリカの雑誌「ライフ(LIFE)」の表紙に掲載されたことから「ケリーバッグ」と呼ばれ、現在でも世界中の女性たちの人気を集めています。

318-1.jpg
Lot 318
エルメス

ケリー28
21×29×10cm
素材:ポロサス 金具:ゴールド Z刻印 色:ブラック
カデナ・キー・クロシェット・布袋付き
エスティメイト:900,000円~1,200,000円

また、1984年、5代目の社長ジャン・ルイ・デュマ・エルメスが、飛行機の中で偶然出会った女優ジェーン・バーキン(Jane Birkin)のために提案し誕生した「バーキン」は、週に2点しか作ることができないという極めて入念な製作過程で知られます。

319-1.jpg
Lot 319
エルメス

バーキン30
23×30×14cm
素材:オーストリッチ 金具:ゴールド I刻印 色:インディゴブルー
カデナ・キー・クロシェット・レインカバー・布袋・箱付き
エスティメイト:1,300,000円~1,500,000円

中でも、今回のオークションには2011年春夏コレクションから登場した新シリーズ、キャンディバーキンが出品されます。その名の通り今にも踊り出してしまいたくなるようなカラフルでポップな蛍光色が何とも新鮮なシリーズです。その素材として使用されたエプソンは、美しいフォルムをいつまでも味わうことができる硬い質感が特徴的な人気の高いレザーです。エルメスならではの上質さや繊細さに、こうした魅力がプラスされたキャンディバーキンをお供に春のお出掛けはいかがでしょう。

313-1.jpg
Lot 313
エルメス

キャンディバーキン25
21×25×13cm
素材:エプソン 金具:パラジウム O刻印 
色:ライム(内側:グリペール)
カデナ・キー・クロシェット・レインカバー・布袋・箱付き
エスティメイト:1,000,000円~1,500,000円

314-1.jpg
Lot 314
エルメス

キャンディバーキン35
26×35×18cm
素材:エプソン 金具:パラジウム O刻印 
色:ブルーエレクトリック(内側:ミコノス)
カデナ・キー・クロシェット・レインカバー・布袋・箱付き
エスティメイト:1,350,000円~1,600,000円

下見会・オークションスケジュールはこちら

みなさまのお越しを心よりお待ちしております。

(執筆:W)


PageTop

今週の西洋美術オークション

こんにちは。
3月の近代美術、近代美術PartⅡオークションにご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

東京は先週から桜が見頃です。
入学式の時期に桜が咲いているというのはめずらしいですね。まだお花見に行かれていない方、都内は今週末が最後のチャンスのようですよ。

さて、今日は14日(土)に開催いたします、西洋美術オークションの出品作品をご紹介します。今回のオークションは、アール・ヌーボーの彫刻や家具、オルゴール、絨毯が充実しています。

まずは絨毯から。
今回は新品同様の絨毯がたくさん出品されます。

116--_convert_20120406174450.jpg
lot.116 ペルシャ絨毯
「クム産 ホセイニ工房」
195.2×130.6cm
シルク
銘有


 こちらはその1点、現在イランで最も注目を集める新進気鋭の若手作家・ホセイニ氏の工房で制作された作品です。全体に配された花々に、50種類を超える色数を用いたという色づかいが見どころです。




アール・ヌーボーからはこちら。
236--_convert_20120406173920.jpg
lot.236 Francois-Raoul Larche
ブロンズ彫刻「嵐」
H57.5×33.3cm
下部に銘・鋳造所銘「SIOT」
エスティメイト \1,000,000~1,500,000


 フランソワ=ラウル・ラルシュ(1860-1912)は、グラン・パレをはじめ、フランスの公的建造物の正面を飾る作品を数多く手掛けた、アール・ヌーボーを代表する彫刻家。シオ=デコヴィル社が生産したブロンズ製品で人気を博す一方、日常の生活用品の装飾化に関心を寄せ、照明器具や飾り鉢など生活を美しく彩る作品を数多く制作しました。特に、アメリカ人の踊り子ロイ・フラーの曲線美を表現したランプはアール・ヌーボーの粋として高く評価されています。

 本作品は、嵐と渾然一体となる5人の裸婦を巧みなバランスで表現した一点です。上流階級の邸宅の客間に飾られたサロンサイズの彫刻としては大型の部類に入ります。ここでは、アール・ヌーボーの女性像に多く見られる曲線的な造形や甘美な雰囲気ではなく、裸婦を飲み込むように激しく渦巻く嵐の猛威、それに抗うような肉体の力強さと躍動感が強調されています。裸婦の勇壮な姿は人間が生きることに立ち向かう様を象徴するようで、ラウル・ラルシュの彫刻家としての信念と技術力が結集された名作と言えるでしょう。

オルゴールはシリンダー式、ディスク式、オートマーターなど各種出品されます。
348-1--_convert_20120406174132.jpg
lot.348 シンフォニオン社
ディスク式オルゴール「シンフォニオン エロイカ」
H283.0×W68.0×D43.5cm
ディスク:D34.7cm 39枚付
鍵1本
エスティメイト ★\2,000,000~3,000,000








348-2-_convert_20120406180646.jpg
内部:3枚のディスクが同時に回って合奏します。

 シンフォニオン社(1886-1914)は、パウル・ロッホマンがドイツのライプチッヒに設立したディスク・オルゴールメーカーです。世界で初めてその製品化に成功して発展し、三大ディスク・オルゴールメーカーの一つとなっりました。複数のディスクを同時に使用して演奏するマルチプル・ディスクのオルゴールなど、音の表現の可能性やケースの装飾性を追求したユニークな製品を製作したことで知られています。

 「英雄」を意味する「エロイカ」は、マルチプル・ディスクのオルゴールの中でも最も多く作られた傑作です。メイン、サブ、アクセントの三枚のディスクを同時に使用することで、音の強弱や連続など豊かな音楽表現を可能にしました。
 本作品は時計が付いたホールクロック型の一点です。ケースにドーム型の屋根と天使をモチーフとした美しい彫刻が施されており、その音色だけでなくエレガントな調度品としても楽しめる点が大きな魅力です。

下見会・オークションスケジュールはこちら

みなさまのお越しを心よりお待ちしております。

(佐藤)




PageTop

51年ぶりに発見された幻の作品―岸田劉生《黒き土の上に立てる女》

こんにちは。
先日の近代陶芸/古美術/近代美術PartⅡオークションにご参加いただいた皆様、どうもありがとうございました。

今日は今週、3月24日(土)に開催されます近代美術オークションの出品作品の中から1点ご紹介いたします。こちらは、なんと「51年ぶりに発見された幻の作品」ということで新聞でも報道されました。

126rgb_convert_20120319192303.jpg
Lot.126 岸田劉生(1891-1929)
《黒き土の上に立てる女》
62.0×46.8cm
キャンバス・油彩 額装
1914年作
右下にサイン・年代
裏にサイン・タイトル・年代
劉生の会登録証書つき
エスティメイト ★\7,000,000~10,000,000

掲載文献:
『岸田劉生画集 目録・解説』P.136参考33(岩波書店)
『岸田劉生の作品に関する私ノート(郡山市立美術館研究紀要第2号)』P.67№41(郡山市立美術館)
『岸田劉生とその周辺』№2(東出版)
『劉生と御舟展図録』参考図版掲載 P.14 fig.4 1996年(豊田市美術館)
『芸術選書 岸田劉生』挿図22(中央公論美術出版)
『国際写真情報 1961年10月』
展覧会歴:
岸田劉生作品展覧会 1914年(京橋・田中屋)
第14回巽画会美術展覧会 1914年(上野竹之台陳列館)



 「麗子像」の連作で知られる岸田劉生は、日本の近代美術を代表する画家の一人です。まずはその生涯についてお話します。

 1891年、実業家・岸田吟香の第九子として東京・銀座に生まれた岸田劉生は、17歳のとき白馬会葵橋洋画研究所に学びました。20歳の頃、雑誌『白樺』との出会いから後期印象派の洗礼を受け、フュウザン会を結成します。その後、北方ルネサンス絵画に傾倒して写実を追求し、草土社のリーダーとしても活躍。さらに、中国の宋元画や初期肉筆浮世絵といった東洋美術に心酔し、神秘的で内省的な「内なる美」の芸術を生み出していきました。

 では、本題に入りましょう。
本作品はキャンバス裏面の記述より、1914年7月25日(当時23歳)に制作されました。副題を《農夫の姫》といい、1961年に雑誌『国際写真情報』に掲載されて以来行方知れずだったと伝えられています。代々木に住居を構えたこの時期、劉生はデューラーやウィリアム・ブレイクといった北方ルネサンスや西洋古典の巨匠たちの作品に大きな影響を受けました。その「クラシックの感化」は愛情をもって自然を見つめる写実の姿勢や細密描写として、また、宗教画や構想画の要素を取り入れる試みとして作品に表されていきます。

《南瓜を持てる女》rgb_convert_20120319192735
 本作品は、このわずか19日前に制作された代々木時代の名作《南瓜を持てる女》(右参考図版:石橋財団ブリヂストン美術館蔵)に題材と構図が極めて類似しており、同じ西洋古典絵画を参考にしたものと推測されます。両作品ともに、麗子を産み母になったばかりの妻・蓁(しげる)をモデルにしたと思われる農婦が、胸を露わにし大地を踏みしめて立つ姿を生命や豊穣の象徴として描いています。
 劉生は《南瓜を持てる女》において、農婦を聖女に見立て、アーチ型の縁飾りを取り入れて宗教性や精神性の高さを表わしました。それに対して、本作品では農婦の女性らしさやみずみずしさを強調し、高く盛り上がった赤土と密集して茂る草木をいっそう力強く描き出すことにより、満ち溢れるような生命感を理想化して表現しています。
 また、こうした自然の描写には、翌年に制作され草土社の名称の由来となった《赤土と草(赤土と草の道)》(浜松市美術館蔵)との共通性がすでに見て取れ、それは劉生の代表作の一つである前述の重要文化財《道路と土手と塀(切通之写生)》へと展開していきます。

 ちなみに、今週のオークションでは、劉生の代名詞的なテーマ《麗子》も出品されます。こちらは鵠沼時代、1922年5月18日にコンテで描かれた作品です。8歳の麗子が横目で微笑む姿を妖しくデフォルメして描き出したものですが、これはこの時期劉生が没頭していた「グロテスクな美」、すなわち東洋的な超現実性を追求したものです。こうした神秘的な表現は、同じ年に制作された《二人麗子図》(泉屋博古館蔵)や《野童女》にも見て取れます。

岸田劉生《麗子》_convert_20120319192911
Lot.122 岸田劉生《麗子》
34.2×25.5cm
紙・コンテ 額装
1922年作
左上にタイトル、右上にサイン・年代
劉生の会登録証書つき
『岸田劉生の作品に関する私ノート(郡山市立美術館研究紀要第2号)』P.102№22(郡山市立美術館)
岸田劉生個人展覧会出品 1922年(野島邸)
エスティメイト ★\2,000,000~3,000,000


ミュージアムピースが揃った今回のオークションは、ぜひ下見会で本物をご覧ください。
下見会スケジュールはこちら
皆様のお越しを心よりお待ちしております。

(佐藤)

PageTop